ソフトウェアの品質はオフショア実行における最も重要な課題の一つです。ソフトウェアの品質が問題になる原因は、いくつかありますがここでは、その一つの原因である品質に対する考え方の違いについて考えてみましょう。ベトナムでのオフショア開発は、日本とベトナムという、国民性が違う国と国の間で開発を行うのですから、必然的に考え方の違いが影響してくることが予想されます。
目次
1.オフショア開発で国民性の違いがソフトウェア品質に影響するのか?
1.1.国民性の違いとソフトウェアの品質
まず、ベトナム人の国民性について考えてみましょう。一般に、ベトナム人は勤勉でまじめであると言われています。でもそれは、いわゆる日本人のまじめさとは若干違います。
ベトナム人もほかのアジア諸国と違わず、時間にはルーズです。結婚式の開始時間などあてになりません。招待状に書いてある時間に行っても誰も来ていないのが当たり前です。また、約束したことを必ずしも守りません。
アパート探しで、部屋をチェックしたくて、アパートのオーナーと待ち合わせしても何の連絡もなくキャンセルになることもよくあります。
こういった、決めたこと、約束したことを守らなくても当たり前、それほど批判されないということが、ソフトウェアの品質に対する意識にも影響しているように思われます。
1.2.決められた納期内でソフトウェアの品質を保証できるかが重要
決められた時間を守らない(守れない)ということは、納期内でソフトウェアの品質を保証できないという問題につながります。ソフトウェア開発は品質 が重要であることは言うまでもありませんが、納期とのバランスはさらに重要です。膨大な時間をかければ、バグはなくなり、品質は向上するでしょう。
でも大事なのは決められた時間の中で十分な品質を確保することです。時間という横軸の中でいかにして品質を作り込むかが私たち日本人のソフトウェア開発の根底にある考え方ですが、これを実際のベトナムオフショア開発現場で理解してもらうためにはかなりの労力が必要になります。
でも幸いなことにベトナム人は、先に話したようにアジア諸国の中では、まじめで勤勉な方なので理解してもらえるということは十分期待できます。
2.ソフトウェア開発でどうしたら品質の違いを分かってもらえるか?
日本人の品質について説明するとき、ベトナム人に理解してもらうために次のような話をすることがあります。
「あなたが、土地を買って、そこに自分の家を建てようとして、施工業者に依頼し、4か月後に必ず引き渡してもらうことで契約をしたする。引き渡し予定日の前日に確認したところ、屋根はできているが、水道は出ない、電気はつかない、あちこちに工材の残骸がある。2階までの部屋ははできているが3階は工事中だ。このような状態で相手が、お金をくれといったところで支払うのか?」
もちろん基本的には、彼らもノーと言います。でもこの中で許容できる条件に付いて詰めていくと意識の違いが出てきます。2階部分までできていればいいよとか、残骸は仕方がないとか、この一つ一つがソフトウェア開発における品質意識の差に繋がってくるという説明をすれば、ある程度は品質感が違うということをわかってくれます。
もちろんこれは、考え方として理解してもらえるということであって、そのために何をすべきかということは別問題になります。
品質意識の違いについては、教育と仕組みで解決することができると言われています。まじめで勤勉なベトナム人が相手なので、これはなおさら有効であると思われます。
3.ソフトウェアの品質管理はどうやるべきか?
3.1.お互いの考え方を理解したうえでソフトウェアの品質管理の仕組みをつくる
教育については、地道にやっていくことが一番ですが、仕組み作りはどうやるべきでしょうか?
単純に考えれば、日本の品質を期待するわけですから、ベトナムオフショア開発でも日本のソフトウェアの品質管理のやり方をそのまま適用してそれに従わせる方法が一番ではないかと思ってしまいます。
でも日本の手法が世界の標準ではないことはもう周知の事実です。従って、この管理のやり方をベトナム人に押し付けることは決して正解ではないでしょう。お互いの考え方を理解したうえで仕組みを作ることができれば最高なんですけどね。でもこのお互いの考えを理解するというのが、実際には結構大変な作業になります。
一般的なベトナムオフショア会社の場合、現地駐在の日本人あるいは日本からの出張者が、言語のハードルはありますが、日本側の考えを伝え、また現地の意見も取り上げて、理解しながら、さらにプロジェクトでPDCAをまわして、意識の整合をした上でソフトウェアの品質を評価することに努めています。
3.2.BAPのソフトウェア 品質管理
弊社(株式会社BAP)の場合は、社長はベトナム人ですが、長年、日本のIT企業で働いた経歴を持っているため日本の品質に対する考え方を十分理解できています。また幹部のほとんどはハノイ工科大学出身で、HEDSPI プロジェクトに携わった優秀なメンバーであるため、日本人の品質への思いを熟知しています。
彼らは、当然、一般のベトナム人の品質意識も合わせて理解しているため、考えの違いをわかりやすくベトナム人エンジニアに伝え、目指す方向を示すことができます。
また、弊社には日本法人もあり、お客様と常に接することができるということも合わせて、日本のお客様に満足できるような品質づくりが出来ていると自負しております。
4.結論
オフショア開発においては、国が違えば色々な価値観が変わってくるのは必然です。相手側の国民性も尊重しながら、このギャップを埋めてソフトウェア品質をより良くするのための仕組みづくりをすることが大事です。こうすることによりオフショア開発のメリットは必ず出てきます。
株式会社BAPでは、東京の事務所に常駐するベトナムの開発者と日本語で話ができ、Skypeなどを用いて現地の開発者の生の声を聞くことができます。