皆さんご存知のように、オフショア開発のスタイルには、大きく分けると請負型開発(請負型契約)とラボ型開発(ラボ型契約)の2つがあります。どちらのスタイルも一長一短があるのですが、今回は、ベトナムでのラボ型開発に焦点を当てて、詳しくそのメリットについて紹介したいと思います。
1.ラボ型開発とは?
もう改めて述べるまでもないのですが、ラボ型オフショア開発とは、簡単に言えば、固定メンバーのオフショアチームを一定期間、一定予算で抱え込んで開発を進めるやり方です。言わば、自社の開発拠点の一部をベトナムに構えるということに近いですね。自社の開発拠点とほぼ同じように扱えることになるので、うまくいけば非常に自由度と柔軟性の高い開発が期待できます。
一方、現在日本では、深刻なIT技術者不足に陥っており、人口の推移を考えてみてもこの傾向は当面続くことが予想されています。そこで、ラボ型開発なのです。このラボ型開発は、優秀で豊富なベトナム人エンジニアを安定的に活用できる可能性があるため、技術者不足の解決策の一つとしても大いに期待されています。
ラボ型開発の契約は、現代の外国企業にとって最も好まれているオフショア開発の動向でもあります。
2.ラボ型開発のメリット
一般的に、ソフトウェア開発というものは、開発途中で発生するエンドユーザーからの仕様変更への対応や突発的に発生する過去のプロジェクトの不具合対応など、プロジェクト開始前に想定した予算やスケジュールにインパクトを与えるようなことが起こり得るものだという認識は誰もが持っていますよね。でもこれは、オフショア開発に限ったことではありません。日本国内のベンダーに委託した場合でも当然、同様のことが起きる可能性はあるわけです。
- ラボ型契約は予算を立てやすい
ラボ型開発は、前述した課題に対応できると言われているんです。ラボ型契約では、事前にメンバーと予算を確保しているため、チームに依頼する業務内容は、柔軟に変更できますし、各メンバーの作業量の調整も可能です。
従って、発注側はオフショア開発に対してネガテイブになることなく、課題にもオフショアチームと一丸となって積極的に対応していくことができるという訳です。それでは、ラボ契約のよく知られているメリットをまとめてみましょう。
- 自社の業務にマッチした人材の安定的確保が可能
- 自社プロセスの採用による管理効率化と品質確保
- 各メンバーのスキル、経験の掌握
- 開発予算が立てやすい
等々、オフショア開発をやるときに出てくる課題に十分対応できることが解ります。こうしたケースでは、開発予算を節約するためにオフショア会社のラボ型開発サービスがよく利用されています。
3.ラボ型開発 を成功させるためには何をやればいいのか?
こう言ってしまうとラボ型開発はいいことずくめのように聞こえてしまいますが、もちろんこのメリットを享受するためには、いくつかの越えなければならないハードルがあります。つまり裏を返せばこのハードルを乗り越えられなければ、メリットは期待できないことになるわけです。それでは、一体何をやる必要があるのか見てみましょう。次のことが挙げられます。
- 育成:教育訓練の実施
- 濃厚なコミュニケーション:仲間と呼べる関係
- 意識の高揚:モチベーションの維持
3.1. ラボ開発には育成が必要
まず第一に挙げられるのは育成です。一般に、オフショアチームのメンバー構成の考え方には二つのパターンがあります。
- 即戦力メンバーで固めたラボ開発チーム
最も即効的なやり方です。スキル、経験が豊富で優秀なメンバーだけを集めてチームを作ります。理想的ですが、現実的にはそれだけのメンバーを集めるのは、さすがにベトナムでも無理かもしれません(日本よりは可能性はあると思いますが…)。また、もし集められたとしてもそのレベルの人材ばかりであれば、だとコストもそれなりに覚悟する必要があります。
- 優秀なキーパーソンを中心としたラボ開発チーム
ベトナムは、国家戦略としてIT立国を目指していますので、若いIT技術者は豊富です。しかし、彼らは高い潜在能力はあっても、残念ながら現状ではそれほど経験はありません。
但し、既に日本とのオフショアラボ型開発を長年経験してきた人材もいることは確かです。従って、これらの経験豊富なキーパーソンを中心にまだコストの安い、将来性豊かな若手技術者を配置し、育成しながらプロジェクト経験を積ませ、チーム力を成長させていくやり方です。
自社の新入社員を教育して育成するのに近い感覚ですね。但し、ベトナムの大学では、インターンシップ制度もあり、実践的なIT教育を受けています。従って、立ち上がりのスピードはベトナムのラボ型の方が早いと思います。
現実的に考えた場合、「優秀なキーパーソンを中心としたチーム」を作ることが、最善の策だと思われます。このために、まず最初は、日本側からの強力な指導が必要です。ベトナム人エンジニアを指導しながら、OJTでプロジェクトを遂行し、彼らに経験を積ませチームとして育成させていきます。
このプロセスを通して、自社に合ったソフトウェア開発プロセス、品質の考え方等を覚えさせることになります。この時気をつけたいことは、自社のやり方を押し付けるのではなく、ベトナム人のやり方も尊重しながら、プロセスを考えていくことです。
彼らは、いろんな会社と仕事をした経験がありますから、ラボ開発に関するいろいろなヒントがもらえるかもしれませんよ。
3.2 ラボ型開発には濃厚なコミュニケーションと信頼関係が必要
ベトナムでのラボ型開発では、ベトナムを単なるオフショア先としての位置づけではなく、重要な開発パートナーとして彼らを見ることはとても大切なことです。そう思われることにより彼らもあなたたちを信頼するようになり、期待に応えようとするでしょう。
ここで、「濃厚なコミュニケーション」と書きました。コミュニケーションの大切さは、ラボ型開発に限らず、オフショア開発共通の課題ですね。でもここで言っているコミュニケーションは、定期的な打ち合わせや報告などによる業務連絡のことではなく、オンサイト招聘、ベトナム現地への出張などによるFace to Faceの密度の深いコミュニケーションを意味します。
彼らと直接会って、仕事以外の話題に関しても言葉を交して得られるコミュニケーションは、形式的な会議だけでは得ることができない素顔をさらけ出して、貴重な絆を築かせてくれるでしょう。彼らと親密になることにより、人間的な信頼関係を築くことができれば理想的ですね。
3.3 ラボ型開発にはモチベーションの維持が必要
ラボ型開発の目的は、優秀なメンバーを固定的、継続的に確保することです。ジョブ・トランスファー市場が日本より活発なベトナムにおいては、彼らが、給料の良さに惹かれるのはもちろんですが、それだけではありません。
自分がいかに意義ある業務をやっているかや、チームの中でいかに重要なポジションを任せてもらえるかなども彼らのモチベーション維持には欠かせません。やりがいがある仕事をともに成し遂げ、モチベーションを維持していくことが、長期的な人材の確保にもつながるのです。
4.最後に
育てながら、自社の開発スタイルに適合させ、密接なコミュニケーションで彼らの信頼を勝ち取るとともに、より彼らのスキルや性格も知りつくす。これができて初めて、ラボ型オフショア開発があなたにメリットをもたらすことになるのです。
でもこんなことは、特別なことではなく、私たちが長年かけて日本のパートナーと築いてきたこととほぼ同じことですよね。言葉や国民性の違いはありますが、ベトナムとの間でも同じことができれば、転職の多さなどから、彼らは一見ドライに見えますが、恩義に熱い国民性も兼ね備えているので、必ずやあなたの重要な末長いパートナーになってくれると思います。
ラボ型契約は、費用の安さだけを求めるのには適していません。しかし、先にも述べましたが、日本だけで技術者を確保することは、さらに難しくなっていくでしょう。この解決策として親日的なベトナム人によるラボ型開発を採用するのは、十分検討に値すると思います。
株式会社BAPは東京、大阪、ベトナムダナン、ホーチミンに開発拠点を持っています。総勢125人規模です。
普通のオフショア会社と違って、日本人と優秀な日本語が使えるベトナム人が常に日本に駐在して、日本で開発チームを組む事と変わらない環境でプロジェクトを遂行できるため、色々な問題をクリアし、且つ、日本国内での開発よりもコストを抑えられます。
オフショア・ラボ契約のいずれの形でも対応いたしますので、是非ご相談お願いいたします。