オフショア開発の現状からメリット・デメリット、失敗しないための解決策まで紹介します。是非ご参照ください。
1.オフショア開発とは?
オフショア開発 (Offshore Development) は海外に自社の開発拠点を設立して開発を行う、または海外の開発会社にアウトソースすることです。日本と開発拠点の人件費の差を利用して、コスト削減の目的で実施される開発手法です。現在、日本ではIT人材の不足が深刻化しているので、コスト削減だけではなく人材不足の解決策としても有用な方法として注目されています。
2.オフショア開発の現状と動向
開発拠点はコスト削減が期待できるアジア諸国集中しているのがオフショア開発の現状です。こちらはオフショア人気国の平均単価一覧です。
- 中国 38.13万円
- インド 38.65万円
- フィリピン 33.72万円
- ベトナム 32.26万円
- バングラディッシュ 29.25万円
- ミャンマー 26.50万円
(単位:人月)
※単価は年々上昇しています。記載されている価格は参考程度に留めてください。
実は、一年前にも各国の平均単価を調べたのですが、全体的に4万~6万円ほど上がっています。オフショア開発を担っている国はいわゆる発展途上国がほとんどです。これから経済が発展し、賃金も著しく上昇します。
オフショア開発の動向として、コスト削減を主に目的とする企業は単価の安い国にシフトしていきます。しかし、IT人材の人手不足という問題を抱えている日本企業にとって、コスト削減が見込めることだけではなく長く付き合えるパートナーかどうかもオフショア先の重要な判断材料となっているようです。
開発予算を節約するために、外部会社へ依頼する企業はスマホアプリ開発とかラボ契約などのサービスもよく利用されています。
3.ベトナムオフショア開発のメリット・デメリット
3.1.ベトナムオフショア開発のメリット
3.1.1 優秀で豊富な人材
豊富な人材はベトナムオフショア開発の大きなメリットと言えるでしょう。ベトナムではITエンジニアが約30万人以上いると言われています。IT系の学部から卒業する学生は毎年約5万人です。
さらに、ベトナム政府は世界中のIT需要に応えるために2020年までにIT人材を60万人までに引き上げる目標を掲げており、教育機関と連携したIT関連学科の増設が実施されています。さらに、多くの人材が即戦力となります。ベトナムの就職の形態は、日本と異なります。
日本が新卒一括採用でポテンシャルを重視するのに対し、ベトナムでは実務経験があり即戦力となる人材を採用するのが一般的です。そのため、ほとんどの学生が2か月から6か月ほどのインターンシップを経験しています。IT系の学部においては、プログラミングの実務経験のあるエンジニアを採用することが出来るため、彼らは会社にとって即戦力となります。
3.1.2 日本にとって好都合なポイント
ベトナムオフショア開発のメリットとして、好都合なポイントが3つあります。
1つ目は、距離がそれほど遠くないことです。成田からハノイ、ホーチミン、ダナンへそれぞれ直行便があり、飛行時間は5~6時間程度です。日本からの出張費(※)は、シーズンによるものの基本的には10万円以内に抑えることができます。
ベトナムでオフショア開発をする場合、オンライン会議だけではなく定期的に現地の開発チームを訪問し、対面でコミュニケーションをとることをおすすめします。
その際、距離的なアクセスのしやすさは日本企業にとって重要なポイントとなります。
※参考 成田~ホーチミン、2泊3日でビジネスホテルに宿泊する場合。航空券5万円、宿泊費1万円程度
2つ目は、日本とベトナムの時差はわずか2時間であることです。ベトナムでオフショア開発をする場合、ほとんどのケースでオンラインの定例ミーテイングが行われます。就業時間に大きな差がないためミーティングも実施しやすいです。
さらにベトナムは始業時間が日本より早く、8時からの会社が多いです。日本の会社では9時始業が多いので、仕事時間の時差は実質1時間程度しかありません。
時差が少ないことは開発チームとのコミュニケーションにおいて良いポイントです。
3つ目は、食べ物が美味しいことです。ベトナムでの食生活は控えめに言って最高です。ベトナム料理は日本人の口に合うと言われています。ベトナム料理としてフォーや春巻きなどが有名ですが、ほとんどの料理が辛すぎなることなく、優しい味付けのものが多いです。
また、ホーチミンやハノイでは既に多くの日本食店が進出しているので、日本の味が恋しくなったときでも困ることはないでしょう。
また、ベトナムには17万人超の韓国人が住んでいるため(日本人の10倍程度)、韓国料理も充実しています。その他、ベトナムには多くの外国人が住んでいるためベトナム料理以外の選択肢もたくさんあります。
ベトナムは世界中の料理が日本で食べるより安く食べられる素敵な国なのです。いくら仕事とはいえ、食生活が合うかどうかは訪問者にとって重要なポイントになるでしょう。
3.1.3. 高い日本語スキル
ベトナムオフショア開発で窓口となるブリッジSEは、日本人または日本語が通じるベトナム人というケースがほとんどです。そのため、仕様を伝える際も日本語でやりとりができます。
これは英語でのコミュニケーションが必要とされる他のオフショア開発先と比較して大きなメリットです。お互いに母国語ではない英語を用いてイメージを共有するのはとても難しいです。
このような認識のずれを防ぐために、業務連絡で英語を使用することを敢えて禁止しているオフショア開発会社もあるほどです。ベトナムの若者は全体的にアニメや漫画などを通して日本に関心が高いため、日本語学習者が多いです。日本語でやり取りができるベトナムは英語がメインとなるインドやフィリピンに比べて、コミュニケーションにおいて大きなメリットがあります。
3.2.ベトナムオフショア開発のデメリット
3.2.1. 時差が存在する
オフショア開発において時差はデメリットとなり得ます。先ほど、日本とベトナムの時差はわずか2時間と述べましたが、人によっては大きく感じるかもしれません。
両者の就業時間を下記のように仮定すると、昼休憩を除いて就業時間内にベトナム側と連絡をとれるのは、10時~12時、15時~17時半、つまり4時間半程度となります。これは、両者が残業を全くしない前提での時間ですが、4時間半というのは少し短いように感じます。
例)
日本:9時~12時、13時~17時半
ベトナム:8時~12時、13時半~17時
3.2.2. 国民性と文化の違い
オフショア開発において、国民性と文化の違いは必ずと言っていいほど課題となりえます。一般に、ベトナム人は勤勉でまじめであると言われています。でもそれは、いわゆる日本人のまじめさとは若干違います。ベトナム人もほかのアジア諸国と違わず、時間にはルーズです。
以前、ベトナム人の結婚式に参加しましたが、招待状に書いてある時間に来たのは日本人だけでした。また、約束したことは必ず守られるとは限りません。
アパート探しで、部屋をチェックしたくて、アパートのオーナーと待ち合わせしても何の連絡もなくキャンセルになることもよくあります。こういった、約束したことを守らなくてもそれほど批判されない風潮が仕事に対する意識にも影響する場合があります。
4.なぜオフショア開発は失敗するのか
4.1.オフショア開発で失敗する理由
4.1.1. 仕様理解が難しい
専門性の高いシステムをオフショア開発する場合、日本語が分かるブリッジSEやコミュニケーターがいたとしても、日本特有の専門用語が理解ができないときがあります。
例えば、自動車の販売管理システムの開発を依頼した場合、外国人の開発者が「型式」「型式指定番号」「形状」の意味と違いをそれぞれ理解できるでしょうか?このような専門用語は、日本人にとっても理解するのが難しいです。
他にも、片仮名には説明を加えたり、主語を明確にしたり、仕様書を作る際に配慮した方が理解されやすいでしょう。
4.1.2. 日本的な開発スタイルが通用しない
日本では仕様書を詳細に書かなくても、「プロなら書いてなくても気づいてくれるだろう」と思ってしまう傾向にあります。確かに、同じ日本であれば品質に対する意識に大きな差はないと考えられます。付き合いが長くなれば、指示されなくても発注者の意図を汲み取って対処するという優秀な開発者もいるでしょう。
しかし、海外の開発会社ではそうはいきません。基本的に仕様書に書いてないことは実施されないと思っておいた方が良いでしょう。当然、品質に対する意識にも違いがあります。
開発側とのコミュニケーションにおいて、「これ言った方がいいのかな?」「この前質問した件、返事がないけど対処してくれているのかな?」と思い悩んで何も指示をしないよりも、詳細に指示を出し行く方が良いでしょう。そのようなコミュニケーションを円滑に行うためにも一度現地を訪問することをおすすめします。顔を合わせればお互いに安心して連絡が取りやすくなります。
さらに、言語の壁はありますが、直接会話をすることでプロジェクトのゴールを共有できるかもしれません。
4.1.3. 経験が浅い
ベトナムはITエンジニアの大半が若者であり、経験が豊富とは言い難いです。現在、ベトナムの平均年齢は31歳で、人口ピラミッドを見ても若い世代が多いことが分かります。そのうえ、IT市場規模が拡大したのは2010年頃なので、ITエンジニアが増え始めたのも最近のことです。
さらに、ベトナムは自社開発よりもオフショア開発で成長してきた国なので、一般的に濃い経験があまりないと言われています。したがって、中長期でメンバーを固定できるラボ型契約でノウハウを蓄積してくというのもアリです。
4.1.4. 賃金が上昇し続けている
日本貿易機構JETROによると、上昇率は落ち着いてきたものの、最低賃金自体は毎年上昇しています。ベトナムのプログラマーの人月単価は約30万円ですが、これからも上昇する見込みです。今後、ベトナムでもコストメリットが出にくい状況になることが予想されます。
4.1.5. コストのかかるアサインをしている
オフショア開発は開発規模と体制によってコストメリットが変わります。SEやPMはプログラマーに比べてコストが高いです。したがって、プログラマーの数を多く必要とする比較的大規模なプロジェクトであればオフショア開発の方がコストを抑えることができます。
反対に、プログラマーの数を必要としない小規模なプロジェクトの場合、全体に対してPMとブリッジSE割合が大きくなるため、オフショア開発のコストメリットが出にくいと言えます。
4.1.6. 人材を定着させることが難しい
オフショア開発では、ベトナム人の離職率が高いことが問題になります。その離職率は約20%程度で、ベトナム若者の仕事観調査によると、約8割のベトナム人は転職の経験があり、4割の人が転職に対してポジティブなイメージを持っていることが分かります。
実際に、スキルアップの為に転職を繰り返す人も多くいます。また、会社選びの際は給料を重視しているため、理想の給料に到達する見込みがない場合は転職してしまうケースも多いです。
4.2.オフショア開発で失敗しないための解決策
これまで述べた理由から、オフショア開発リスクが大きいと思われるかもしれません。したがって、現地の開発会社と数年間ラボ型契約をしてみるのも有効解決策でしょう。これにより、開発の品質や仕事に対する考え方を理解できるはずです。オフショア開発のリスクを回避してオフショア開発を成功に導くために押さえておきたいことは以下の通りです。
- 長期ビジョンでエンジニアを育成する
- 日本と同じような品質意識をもつブリッジSEを採用する(もしくはそのような会社に依頼する)
- 現地を訪問する機会をつくり、開発者と密なコミュニケーションをとる
5. まとめ
オフショア開発にはメリットだけではなくデメリットも存在します。しかし、デメリットとして挙げた特徴は、考え方次第ではメリットとなる可能性もあります。
例えば、国民性と文化の違いで「約束が守られるとは限らない」ことを上げましたが、反対に、彼らは変更されることや待つことに対して彼らは柔軟な対応してくれます。オフショア開発は注意点さえおさえれば、人材不足やコスト削減にきっと役立つ方法です。オフショア開発を検討されている方にとって、この記事が参考になれば幸いです!
株式会社BAPは、オフショア開発を4年以上経験してきました。日本大手企業で正社員として活動した経験のあるメンバーが多く在籍しています。彼らは、日本の仕事スタイル、ベトナムの仕事スタイルを理解しているため、両者の違いをベトナム人エンジニアに伝え、分かりやすく目指す方向を示すことができます。高い日本語スキルを持ったエンジニアおよび日本人社員により、常にお客様とコミュニケーションの取りやすい環境を整えています。